朝早くから、広い作業場できびきびと動き回る女性達。半ノ浦地区の婦人会からスタートし、昭和57年、島に橋が架かったのに合わせて特産品を作ろうと、島育ちの野菜で粕漬けを作り上げました。昔の島の呼び名にちなんで名付けられた「八太郎漬」。地元の白ウリやキュウリ、ナスを使い、塩漬け作業を2回して、その後4回も酒粕に漬けるという手の込みようです。なんとも上品な深い味わいのある粕漬けです。
その姉妹品が、山菜の粕漬けの「さわらび漬」やダイコン、茎ワカメなどの味噌漬けの「長者どん」などで、どれも人気商品です。能登島の米を使って極上の麹を作り、味噌も作っています。いずれの商品も、会の発足当初から伝統の味を守り抜いています。ふっくらと仕上げた麹を「ぽったぽたや~」と愛しそうに眺めていました。
もう1つのお勧めは、絶品のかぶら寿司です。冬の伝統料理、かぶら寿司。輪切りにして塩漬けしたカブの間に、塩でしめた寒サバをはさみ込み、麹に漬け発酵させます。長年試作を重ね、平成19年に商品化。自慢の麹と旬の素材が調和し、ほんのりとした優しい甘味が口の中に広がります。手頃な価格での提供を心がけているので、評判は広がり、12月に始まる漬け込み作業の前から、予約の電話が鳴ります。
春、暖かい季節になると、能登島大橋のたもとの大駐車場で、別のグループのマーケットが開かれます。テントには大きく「母ちゃん市場」と書かれ、まるで島へ来るお客さんを「こんかいね~」と、出迎えているようです。毎週土日の朝9時半から、16人の島の母ちゃん達が、家の畑で作っている旬の野菜や花、海でとってきた貝や海草類を販売しています。
市場に並ぶ野菜は、もともと自分たちが安心して食べるために作っていたものなので、農薬も少なく安心できるものばかり。採れたてをすぐ近くから調達しているため、スーパーで買うものとは見た目のツヤも味もひと味違います。春にはワラビやタケノコ、夏にはスイカやトウモロコシ、海のテングサやサザエ、そして秋にはダイコン、ハクサイ、山で採れたキノコなどが並びます。また、梅干やラッキョウといった加工品や、布ぞうりなどの手作り小物も販売しています。
商いといっても、その主な目的は、お客さんとのふれあいを通して、自分たちが元気でいられることと、地域おこしにつながるとよいというところにあります。購入いただいたお客さんには、調理の仕方をアドバイスも行っています。個性あふれるメンバーの話を聞いてみるのも楽しみの1つ。海女さんのように海へ潜るのが好きな人、能登野菜の料理コンテストで優勝した人、いろんな母ちゃんがそろっています。市場は冬にさしかかる前、10月末まで続きます。
「やおち」って何?この聞きなれない言葉、実は「親戚」という意味の能登の方言です。遠方に住む人へ島と親戚づきあいをしましょう、との思いから昭和60年に「島のやおち村」特別島民制度が始まりました。その内容は、年5回の旬の特産品を届けることです。
これまで島から都市部や他の地方へ移り住んだ人が多い中、心のふる里を懐かしむ島のファンに、この制度が喜ばれています。初期に発送していたのはジャガイモ、コシヒカリ米、マツタケ、ホタテ(なんと水族館で養殖していました)、そして唯一特産品を販売していた八太郎漬本舗の漬物セットや切り餅、かき餅でした。次第に特産品を作るグループが増え、発送できる商品にも幅が出てきました。
そして多くの方に利用して頂きたいと、色々な工夫をしています。たとえばジャガイモはキタアカリなどの3種類を入れたり、魚介のセットでは鍋に具材を入れて、火にかければすぐにいただけるようにした年もありました。カマスやアジの一夜干しやサバのこんか漬け(郷土料理)を入れることもできます。自慢のコシヒカリは近年、カキ貝の殻を肥料とした「かきがら米」を発送しており、大変好評です。また料理レシピを同封するようにしています。お好みの品への変更等、なるべくリクエストにお応えしますので、電話にてご相談下さい。
島内では、作り上げたものを発送できる「楽しみ、喜び」が生まれ、生産者グループ同志の連携もできてきました。りんご園の梅を使って梅干を商品化したり、カキ貝養殖の水産会社を中心として米を生産販売したりというのは、近年の新たな動きです。「やおち村」をきっかけに、生産者に直接注文が入ることもあります。特別島民の方には各施設での特典もあります。ぜひ島へ遊びに来て下さい。